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2012年12月 8日 (土)

【Music】クリスマスの空気感を閉じ込めた傑作 『A Christmas Gift for You from Phil Spector』

今年も残すところ3週間少しになりました。

クリスマス、忘年会などがあり、年の終りにむけて街がわたわたとにぎやかになるこの時期。私は1年の中で一番好きですね~。

今日は私のお気に入りのCD紹介ですが、こんな前フリをしてしまったからには、やっぱりクリスマスのアルバムを紹介しなくちゃいけないですね(笑)

けっこう有名なアルバムではありますが、こちらです:


『A Christmas Gift For You from Phil Spector』


日本語訳すると「フィルスペクターからのあなたへのクリスマスプレゼント」ということになるでしょうか。

フィル・スペクターという人は、1960年前後からアメリカのポップ・ミュージックの世界で活躍したプロデューサーです。末期ビートルズのアルバム「Let it be」にも参加して、ストリングス・アレンジなども担当しています。

ちなみにフィルスペクターはかなりお騒がせなエピソードを持っている人です。「Let It Be」の製作のときも、ポールと対立したり、ジョンを脅したりと物議をかもし、ビートルズファンからはすこぶる評判が悪いようです。

あげくの果てに、2003年に自宅で女優を殺害したとして、禁固刑にまでなっています。そんなことを知ってしまうと引いてしまいますが、そういった話はとりあえず音楽と切り離しておきましょう・・・


このアルバム「A Christmas Gift ...」は古い作品で、もともと1963年にLPレコードとして発売されたものです。

そして、「フィル・スペクターの作品の中でもナンバー・ワン」とする人もいるほどの、傑作アルバムです。

私は高校生のときにアルバムの存在を知り、ぜひ欲しいと思いました。

それ以来、CD屋に行くたびに置いていないかどうかチェックをし続けたんですが、ずーっと見つけることができませんでした。

当時はネット通販も一般的じゃなかったですからね~。

大学生になり、新宿のタワーレコードでようやく輸入盤を発見したときには、飛びあがらんばかりに嬉しかったのを覚えてます(笑)


さて、このアルバムの内容なんですが、当時のスター・ミュージシャン4組が集まってクリスマス・ソングを歌うというものです。プロデュースはもちろん、フィル・スペクターです。

参加ミュージシャンは、ロネッツ、クリスタルズ、ダーリーン・ラヴ、ボブ・B・ソックス・アンド・ザ・ブルージーンズ、の4組です。

実は、私はここらへんの時代のはやりの音楽はあまり知らず、ロネッツの名前くらいしか聞いたことがありませんでした(苦笑) でも4組とも、当時はけっこうなスターだったみたいです。

収録されている曲は、赤鼻のトナカイ、清しこの夜、ホワイトクリスマスなどの、みんながよく知ってるクリスマスソングばかり。

でもそれがフィル・スペクターのマジックにかかると、あら不思議! まるで目の前に一面の銀世界が広がっていて、クリスマスのハッピーでファンタジックな光景がぱーっと広がってくるかのようです!

この「まさにクリスマス!」という雰囲気を生み出しているのは、フィルスペクターが作り出す、ぼやーっとした「音の壁」です。

どの曲もごわんごわんとトンネルの中で反響するような音質で録音されていて、独特の現実離れした気持ちいい浮遊感に包み込んでくれるんですね。

これがクリスマスのイメージにぴったり。多くのクリスマスソングって、聖夜の雰囲気を出すために音をたくさん重ねて、幻想的なアレンジがされてるじゃないですか? それをより深く追求したのが、このアルバムと言えます。

ただ正直に言うと、何も知らない私がこのCDを買ってきてCD頭の部分を聞いたときにまず思ったことは「音質が悪いなあ」ということでした(笑)

スピーカーから流れてきたのは、なんだかオンボロラジオで聞くAM放送みたいな、こもった感じの音。最近の1つ1つの音がハッキリとした録音に慣れていた私には、はっきり言って「なんだか古ぼったいなあ」「モサいなあ」そして「買って失敗したなあ」(おいおい)と感じてしまったのです。

しかし、フワフワと心地よい、現実離れした音の連続に身を任せるうちに、これがとんでもなく快感になってきたんです。現実を忘れて、頭の中が白銀の世界にそまるような感じ。

そして、広いホールの中で音が何度も反響したような「モサい」音は、実はクリスマスのファンタジックな雰囲気を出すための演出だったことに気づいたとき、「ヤラレタ!」と思いましたね~。

フィル・スペクターは、きらめく雪、かがやくクリスマスツリー、家族や恋人たちの団らん、そういった聖なる夜の幻想的ですてきな雰囲気をそのまま真空パックして、アルバムにつめこんでしまったようです。

LPレコードで発売されていたこの作品をCD化するにあたって、プロデューサーのフィル・スペクター自らの手によるデジタル・リマスタリングが施されました。昔のCDをリマスターするときは、音質がクリアになるように手をくわえるのが普通です。

このアルバムに関しても、音質がもっとクリアになるように手直ししようと思えば、できたに違いありません。しかしフィル・スペクターはそうしなかった。彼はLP版のときの作品の魅力である「クリスマスの空気感」を守ってCD化したのですね。


収録曲を少し見てみましょう。

1曲目はダーリーン・ラブが歌う「ホワイト・クリスマス」。ホワイト・クリスマスは大勢のミュージシャンが歌っていますが、しっとりしたヴァージョンが多いと思います。でもここでは、ドラムが入っていて軽くスイングするようなアレンジになっています。さっそくフィル・スペクターのマジック全開で頭がクリスマス状態になっちゃいます。

7、8、9曲目あたりではクリスマスの超定番曲「ママがサンタにキスをした(I saw Mommy kissing Santa Claus)」、「赤鼻のトナカイ」、「ウィンター・ワンダーランド」が続きます。

CDの頭からここら辺まで聞き続けてくると、もう気分はすっかりサンタクロースです。

10曲目は「どっかで聞いたことがあるなあ」と思ってよく聞いてみると、キューピー3分クッキングのテーマ曲「おもちゃの兵隊のマーチ」として有名な、あの曲でした。これってクリスマスソングだったんですね。ぜんぜん知らなかったです。

最後の13曲目は、なんとプロデューサーのフィル・スペクター本人の語りから始まります。「このCDを聞いてくれたあなたに感謝します、そしてハッピーなクリスマスと新年を」という内容。まさにこのCDは「フィル・スペクターからあなたへのクリスマス・プレゼント」なわけですね。そしてアルバムの参加アーティスト全員による「清しこの夜」のコーラスで、しっとりとアルバムに幕が降ろされます。

聖夜に暑苦しいラブソングを聴くのも結構ですが(毒がある言い方すな)、たまにはこういうシックでマジカルなCDを聞くクリスマスってのも、いいんじゃないでしょうか。


ちなみに、私がこのアルバムを買ったときは真夏でした。ミンミンゼミがやかましく鳴く中で、汗をダラダラ流しながらクリスマスアルバムを聞いている自分が、なんだかマヌケで笑えました(笑)

「クリスマスソング」ってのはだいたいそうだと思うんですが、この時期に「すごくキレイな曲だなあ」と思って聞いていた曲でも、冬以外に聞くとまったく間がぬけた感じがして、気分がのらないですよね。

期間限定の歌・クリスマスソングは、12月のうちに飽きるほど聞いておくことにしましょう(笑)

  

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